The Revenant / 坂本龍一, Alva Noto and Bryce Dessner, Commmons(RZCM-86057)

　坂本龍一、Alva NotoことCarsten NicholaiそしてBryce Dessnerの3人が、Alejandro G Inarritu監督の映画"The Revenant"の音楽を手掛けた作品。第73回ゴールデングローブ賞、作品賞・監督賞・主演男優賞受賞作品。2016年4月22日より全国ロードショー。サウンドトラックは全24曲。

　亭主は"The Revenant"について内容をよく知らないためあえて触れない。Alva Notoといえばミニマルなエレクトロニカ、アンビエントの良作を多くリリースしていて、本作もまたそんな感じ―――かと思いきや、エレクトロニカだけではなく、映画音楽的なオーケストレーショも駆使しており賑々しい。全体としては非常にダークで静謐な雰囲気、いうまでもなく映画の雰囲気に合わせたのだろうが、映画音楽を得意とする坂本龍一、あるいは静謐なエレクトロニカを得意とするAlva Noto、そしてギタリストでありグラミー賞にもノミネートされたことのあるThe NationalのBryce Dessnerという3人の個性が非常によく現れていて、聴いているとそれぞれのホームグラウンドで実力を発揮している安心感がある。

　映画音楽なのだから本来ならば作品とのマッチングを語るべきなのだろうが、音楽のイメージが映画の雰囲気をどんどんと想起させる。どうやら1820年代のアメリカ、大自然を舞台にした男の復讐劇だそうだが・・・。(2016.02.23)

The Catastrophist / Tortoise, Thrill Jockey|P-VINE(PCD-24454)

　シカゴ出身Dan Bitney, Doug McCombs, Jeff Parker, John Herndon, John McEntireの５名を中心としたポストロックユニット、Tortoiseの最新作。「シカゴ音響派」などと呼ばれる前衛的なサウンドと、いち早くハードディスク・レコーディングをおこなった実験性にはテクノファンのみならず、多くの音楽ファンの耳目を集めた。全13曲。

　ポストロック、オルタナ系、様々なジャンルで呼ばれつつも、ブレのない堅実な作品作りに徹してきたTortoise。本アルバムにはこれまで絶対に披露しなかったヴォーカル曲が数曲含まれているほか、サウンドにさらに磨きがかかっている。 こういう作品はえてして作り手よがりになりがちだが、彼らの場合どれほど作りこんでもどこかにポップな成分が含まれていて、聴いていてほっとする。決してパンクに走らない、抑制的なサウンド。1990年から活動を開始、現在まで7枚のアルバムを数える彼らの息の長さは、おそらくこの抑制的で大きく破たんしないサウンドによるものと思われる。(2016.02.12)