EUYMO - Live in London + Gijon 2008
/ Yellow Magic Orchestra, Commmons|Avex(RZCM46096-9)

　エレクトロニカ・ユニットとして再始動したYMOのライブアルバム。UK-LondonとSpain-Gijon（ヒホン）、二つのライブの模様を収録している。それぞれ２枚、計４枚のディスク構成。ロンドンライブはLondonYMO、ヒホン(Gijon)ライブはGijonYMOとしてそれぞれ別のタイトルでも分売されている。EUYMOはLondonYMOとGijonYMOをあわせたディスク４枚に、限定Tシャツが付いた特別盤。値段は9800円と高いので、Tシャツが要らない人はLondonYMOとGijonYMOをそれぞれ買えば良い。もっといえば、LondonYMOとGijonYMOはほとんどの部分で楽曲がかぶっているので、どちらか一方を買うだけでも良い。

　楽曲リストは以下。無印はLondon, Gijon双方に収録されている曲。☆印はLondonに収録されている曲。Gijonのみに収録されている曲はないので、楽曲のみからいえばLondonYMOのみを買えばライブセットの曲は網羅されていることになる。

　GijonYMO

1. 以心電信
2. MARS
3. CHRONOGRAPH
4. FLAKES
5. RESCUE
6. 音楽
7. TURN TURN
8. TOKYO TOWN PAGES
9. THE CITY OF LIGHT

1. WONDERFUL TO ME
2. TIBETAN DANCE
3. SUPREME SECRET
4. WAR AND PEACE
5. RIOT IN LAGOS
6. RYDEEN 79/07
7. CUE

　LondonYMO

1. 以心電信
2. SPORTSMEN☆
3. FLY ME TO THE RIVER☆
4. MARS
5. FLAKES
6. RIOT IN LAGOS
7. 音楽
8. RESCUE
9. TURN TURN
10. TOKYO TOWN PAGES
11. THE CITY OF LIGHT

1. SUPREME SECRET
2. WONDERFUL TO ME
3. TIBETAN DANCE
4. WAR AND PEACE
5. RYDEEN 79/07
6. CHRONOGRAPH
7. CUE

　当然ながら・・・というか、残念ながら・・・というか、曲そのものはLIVE AT SONAR(2004年)やHASYMO(2008年)に、新曲、カヴァー曲を追加した程度、といわざるをえない。"TOKYO TOWN PAGES", "THE CITY OF LIGHT"など最近の新曲、"以心電信"や"SPORTSMEN"、"音楽"、"TIBETAN DANCE"などYMO/ソロ時代の人気曲を収録した「最新版」ではあるが、SKETCH SHOWの曲を中心に、YMOやHASYMOの新曲をちりばめた内容はこれまでと同じく。ちまちまとした曲セットの変更をナットクするか、しないかは人それぞれ、評価の分かれるところだろう。ライブ・アルバムとして素直に楽しめる人はよし、お金に余裕がない、あるいはフルアルバムを聴きたいという人は、シングルを購入して本作はスルーする、という戦略で問題なさそう。 Tシャツが欲しいひとは・・・好きにしてください（笑） amazonなどネットでは限定版ということもあって既にプレミアム価格が付いている。

　"SUPREME SECRET"、"TIBETAN DANCE"そして" WAR AND PEACE"という流れに、昨今のきな臭い民族紛争への反抗が垣間見れるあたりは坂本さんの趣向だろうか。前述２曲はどれも精神性の高い、好きな曲だけに、このような流れに使われるのはちょっと残念。楽曲に政治的・民族的な意味合いを含めることは、エレクトロニカのニュートラルさ、あるいはYMOの持ち味であるチャンプルー（ごった煮）な感覚とは少し外れているような気がするからだ。(2008.12.11 Virgin Megastore水戸店から)

Ten / Coldfeet, Columbia(COCB-53736)

　DJでトラックメイカーのWatusiと、多くのアーティストとのコラボでも知られる歌姫・Lori Fineからなるハウス/ポップスユニット、Coldfeetの結成10周年記念アルバム。Taku Takahashi, blanc, 佐藤タイジらのサポートを受けて完成したフル・アルバムは、アッパーでポップ、聴く人をぐいぐいとひきつける魔法のアルバム。DJ Komori, Daishi Danceによるリミックスバージョン２曲を含む全13曲。

　mixiのコミュによれば、今回の"Ten"、かなり難産なアルバムだったようだ。苦心の末に完成した作品は、ストレートなポップ・チューン。しかしその背後には相当な迷いや、ブレがあったにちがいない。

　このアルバムを聴いた亭主、真っ先に1stアルバム"COLDFEET"を思い出した。ロックやハウス、ポップスなどが持つ「パワー」を純粋な塊として抽出した1stに通じるものを"Ten"にも感じたのだ。荒削りで歪みっぽかった1stのサウンドは、"TEN"では随分と整理され、Loriのヴォーカルも円熟味を増している。完成度は確実に上がっていて、しかも1stアルバムが持っていた「パワー」もしっかりと有している。M2 "It's All About You", M3 "Inspiration"のポジティヴな歌詞は、LoriのWatusiに対する限りないリスペクト。Coldfeetの持ち味でもあるメロウな曲 M5 "In the Middle of the Night", M6 "Rain Come Down"、後半はラブソングでちょいとブレイク、そして（リミックスを除いてはアルバム最後の曲）M10 "Another Ten"は、10年目のユニットが再出発を誓うマイルストーン的な曲。文句なしに楽しい。

　1からはじまり、2、3・・・ときて、10。ゼロに戻り、１繰り上がる。新しい境地に達してさらに原点へと回帰した今回のアルバムは、Coldfeetの「パワー」の新たな基点でもある。体制側へと寝返ったロック、心地よさだけを追いすぎたハウス、もはやビジネスにすらならないポップス・・・そんな停滞した音楽世界に一撃を加えるアルバムかと。(2008.12.11 Virgin Megastore水戸店から)