大天使のように / Yapoos, Baidis|Teichiku(30CH-323)

　戸川純（元ゲルニカ）と泉水敏郎（元ハルメンズ）によって1983年に結成、「戸川純とヤプーズ」名義でアルバム「裏玉姫」をリリースしたのち1987年より正式活動を開始したヤプーズの2ndアルバム。 1988年リリース、全10曲。なおヤプーズはメンバーを入れ替えつつ現在も活動を続けており、2019年には戸川の芸能活動40周年を記念したスペシャルアルバムもリリースされている。

　ダダイスム、ニヒリズム、プロレタリア文学、前衛芸術、SFなどからインスピレーションを受けたパンキッシュなポップス。 戦争や破壊、貧困といった退廃的なコンセプトを多く含み、一方で閉塞した世界からの脱出や救済を夢見るサウンドが特徴的である。 ヤプーズ以前のソロ作「玉姫様」や「極東慰安唱歌」などと世界観を共有しつつ、さらに前衛性を増している。

　亭主は浪人時代にこのアルバムを（カセットテープで）購入し、大きな衝撃を受けたことを覚えている。戸川純は知っていたものの実際に曲を聴いたのは初めてで、「これはやばい！」というのが最初の感想だった。 浪人というストレスを抱えた中でこのアルバムを聴くことが、精神的に必ずしもよい影響を及ぼさないのではないか、という危惧を感じたからで、 ある種の「本能的な自己防衛」がその後のヤプーズにたいする印象を決定付けた、と言ってもよい。 実際亭主は1st「ヤプーズ計画」とこのアルバムを購入したのみ、以降は意識して聴いていない。 ただし戸川純のソロアルバムや、上野耕路・太田螢一とのユニット「ゲルニカ」のアルバムはしっかりと聴いているのである種の「偏食」というか「恐怖心」だと思うのだけれど。

　先にも書いたように亭主はこのアルバムをカセットテープで持っていて、たびたび取り出しては聴いていたのだけれど、徐々にテープの磁気が怪しくなっていたため今回意を決して買い直している。 CDで聴く「大天使のように」は昔から聞き慣れたサウンドで、亭主にとっては「やばい」音楽。 しかし現在の荒みきった心には神経質になるほど「やばい」こともなく、むしろ救いや癒しの部分に強く惹かれているようである(2022.02.17)